動作の学習としてのピラティス その1

こんにちは、ピラティストレーナーの田村めぐみです^^

ピラティスは、術後の回復からハイレベルなアスリートのパフォーマンス向上にまで活用できる、”身体のコントロール”に重点を置いた運動療法として活用されることが多くあります

ジョセフ・ピラティス氏も、自身の著書の中で
「コントロロジー(ピラティス・メソッド)を通じて、まずは意識的に自身の身体を完全に”コントロール”することを覚え、エクササイズを適切に反復することで、意識下での自然なリズムと協調性を徐々に着実に獲得する」と記しています

では、どのような段階を経て、人は動作を学習・習得していくのでしょうか?
そして指導者は、どのようなことを意識して、段階的に指導をできれば良いのでしょうか?

ラーニングマトリクスと運動学習

ラーニングマトリクスとは?
“Conscious Competence Learning Matrix”の頭文字をとって”CCLM”と呼ばれています

動きの習得具合をレベルに分けた指標で、4つの段階に分けられます

1:Unconscious Incompetence
2:Conscious Incompetence
3:Conscious Competence
4:Unconscious Competence

では、それぞれを見ていきましょう!

1:Unconscious Incompetence

いわゆる”レベル1”という段階

Conscious(意識的に)Competence(達成できる・能力がある)という単語の前に”Un”とか”In”という、「打ち消し」の言葉が入っているのがポイントとなります

“Unconscious”という言葉の意味として、
①意識できない、という意味と
②無意識な、という意味があります

この、”レベル1”の状態では”①意識できない”という状態と言えます

つまり、
Unconscious(意識もできないし)、Incompetence(達成できない・能力がない)、という段階

要は、「何がわからないのかもわからない状態」

次のレベルへ進むためには、何が必要なのでしょうか?

主には
「できていない」ことを自身で感じ取る必要がある
・何がわからないのかもわからない状態だからこそ、「なんのために行うのか?」「できるようになることで、どのようなベネフィットがあるのか?」を明確に理解できるよう、指導者は導く必要がある
・動作の見本を見せる。もしくは動いているところの写真や動画を撮るなどの、視覚的なフィードバックも効果的

2:Conscious Incompetence

いわゆる”レベル2”

“Unconscious”の”Un”が消えて、「意識はできる」状態
しかし、”In”competence「達成できない・能力がない」状態

要は、
・「できない」ということを、「認識」した状態
・やり方はわかったけど、できない状態

一番モチベーションが高い状態であることが考えられます

次のレベルに進むためには、何が必要なのでしょうか?

主には
・集中しての、反復練習
・指導者は、動きを見てどんどん修正

3:Conscious Competence

”レベル3”の状態

“Un”とか”In”の打ち消しの言葉がなくなったことに注目です

つまり、
Conscious(意識もできる)Competence(達成できる・能力がある)、という状態

要は、
・より正確に、動作の遂行ができる段階
・ただし、集中しないとできない状態

運動タスクに飽きがくる時期でもあるため、指導者は意識的に練習管理をする必要があります

いわゆる「家でこの動きをやってきてくださいね」という、「宿題エクササイズ」を出すのも効果的です(動作は遂行できるので)
↑ただし、「出しっぱなし」ではなく、必ずチェックをすることが重要

そして、
・飽きがくる時期でもあるため、目的や目標をもう一度明確にしたほうが良い時期
・指導者は、飽きさせない工夫をする必要も大事(例えば、あえてチャレンジングな動きに挑戦してもらう等)

4:Unconscious Competence

”レベル4”の状態

再び”Un”consciousになったことに注目

ただし、ここでの”Un”consciousの意味は、意識「できない」ではなく、「無意識に」の方が当てはまるかと思います

要は、指示された運動が、Unconscious(無意識下で)Competence(達成可能)な状態

最後に

上記のような段階を経て、人は動作を学習し・習得していくという考え方を、その手段の一つとしてご紹介いたしました

そしてそれらが、『FittsとPosnerの3段階モデル』という運動学習のモデルだったり、いわゆる武道などでよく用いられる『守・破・離』の考え方と共通する部分が多いため、次回はそれらとの共通点も交えてお伝えしたいと考えております!

【参考資料】
・PHI Pilates JAPAN Original Study Guide Section Ⅲ
・臨床スポーツ医学 2016年8月号
・運動療法としてのピラティスメソッド
その他

投稿者プロフィール

田村 恵美
田村 恵美
国家資格を有するPHIピラティスのマスタートレーナー
身体機能改善とパフォーマンスアップに定評のある『PHIピラティス』をベースとしたオーダーメイドのマシンピラティス・パーソナルトレーニング指導を得意としております
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